太陽光発電の需要が高まる近年、中古物件(セカンダリー)が注目を浴びる機会も増えました。新規設置とは異なるメリットを得られますが、具体的な実践方法や注意点が分からず購入をためらっている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、土地付き太陽光発電の概要と魅力を詳しく解説します。購入時の注意点も押さえておくと、よりお得に運用できるでしょう。さらに、注意しておきたい抵当権についても併せて紹介します。
土地付き太陽光発電の中古物件(セカンダリー)が増えている理由
太陽光発電において現在注目されているのが、「中古物件を購入・運用する」という方法です。太陽光発電の普及当初は新規購入が前提ともいえる時代でしたが、世界的な感染症の流行や制度改正により、市場の動向は大きく転換の時期を迎えました。
中古物件の供給が増えて需要が高まる理由について、2023年6月現在の状況を踏まえ、3つの観点から解説します。
節税対策の目的が果たされた
個人・法人を問わず、売電によって一定の収入を得た場合は基本的に確定申告が必要です。一方、太陽光発電システムは固定資産として減価償却できるため、法定耐用年数を過ぎるまでは節税効果を生むという大きなメリットがあります。
電気を生み出すことを目的とした太陽光発電設備の法定耐用年数は17年です。この期間を過ぎると減価償却による節税メリットがなくなるため、「太陽光発電設備を売却して利益を得たい」と考える方も見られます。
一見十分な売電収入が見込めるにもかかわらず、耐用年数が経過し売却された設備が、セカンダリーとして流通する流れを形成しています。
コロナ禍による景気後退でキャッシュが必要になった
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行により、世界規模で経済的な問題が深刻化しました。「勤め先の給与所得が激減した」「個人事業主としての経営が続かない」といった理由により、太陽光発電を売却して当面のキャッシュを確保しようという動きが活発化したといわれています。
所有している固定資産の売却は、迅速に現金を確保するために有用な選択肢といえるでしょう。長期継続的に売電収入を得るよりも、設備を売却した方が一時的に大きな利益も得やすくなるためです。このように、景気後退も中古物件の増加要因として考えられます。
2023年の制度改正で低圧物件の管理が煩雑化
2023年3月から「電子事業法」の改正内容が施行開始となりました。この改正内容のうち、「小規模事業用電気工作物にかかる届出制度等」という部分が太陽光発電システムの運用と関わってきます。
具体的には、10kW以上50kW未満である小規模の再エネ設備を「事業用電気工作物」として位置づけることにより、事業者に対し設備情報の届け出や技術基準適合維持の義務が追加されるというものです。
この改正にあたっては、FIT制度の開始にともなって再生エネルギー発電設備の導入が増加し、多様な設置形態のもと管理されることで、事故や災害のリスクが懸念されることが挙げられます。実際に、2021年度において小規模な太陽光発電設備における事故は194件にのぼっており、再発防止や適切な安全を確保することを目的としています。
ただし、この改正の内容はFIT認定を受けている既設の設備に関しては対象外となるため、中古物件での運用が注目を集めているというわけです。
中古の土地付き太陽光発電を購入する4つのメリット
土地付き太陽光発電の中古物件には、新設とは異なるメリットが複数あります。購入を検討するにあたり、どのような利点があるのか把握しておきましょう。
過去の運用実績だけでなく、運用開始までの期間や資金調達の難易度といった点も重要です。特に魅力的なメリットを4つ挙げ、仕組みや理由を詳しく解説します。
売電開始からの運用実績を確認できる
中古販売されている太陽光発電設備は、過去に運用されていたものがほとんどです。中には10年以上の運用実績を有しているケースもあり、購入時には具体的な数値を確認できます。運用実績の有無は、新規設置との大きな相違点といえるでしょう。
「購入後どのくらいの価格で売電できるか」は、公的な日射量データやFIT制度の規定によって算出できますが、過去の実績を併せて考えると、より具体的なシミュレーションもしやすくなるでしょう。実績を確認できない新規導入に比べ、安心感を得やすい点がメリットです。
過去にFIT認定された物件は売電単価が高い
FIT制度では産業用の場合、太陽光発電の売買契約時から20年間固定価格で売電できる仕組みを採用しています。例えば2012年度に契約したシステムの場合、2032年度までは単価40円での売電が可能です(10kW以上の設備)。
現在は売電価格が下落している状況にあるため、売電価格が高い時期にFIT認定された物件のほうがより利益が多く出るということが言えます。
なお、2019年以降の売電価格は以下のように推移しています。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
10kW未満 | 24円~26円 | 21円 | 19円 | 17円 | 16円 |
10kW以上50kW未満 | 14円 | 13円 | 11円 | 10円 | 9.5円 |
50kW以上250kW未満 | 14円 | 12円 | 12円 | 11円 | 10円 |
これは、売電価格が太陽光発電を設置するためのコストや利潤などを勘案して決定されることが理由です。近年はFIT期間の終了した設備や物件が多くなっていること、また技術革新などによる製造コストの縮小などが要因となり、売電価格の下落は今後も続いていくものと見られています。
中古物件ではFIT制度適用の期間は短くなるものの、売電単価の面ではこのようにメリットが大きいといえるでしょう。
決済完了後すぐに運用が始められる
太陽光発電設備を新たに導入する場合、土地を整備したり機器を設置したりといった工程が必要です。実際に運用を開始するまでに、2か月~3か月程度を要するケースも見られます。一方で、中古物件はすでに設備の設置が行われているため、大がかりな工程の省略が可能です。
多くの場合、すぐに運用開始ができるような設備は整っているため、購入直後から運用をスタートできると考えてよいでしょう。発電システムの契約者や、売電時の振込先情報などを変更すれば準備は完了です。「なるべく早い段階から実践したい」と考える方にとっても、中古物件は魅力的だといえるでしょう。
資金調達しやすい
新しく設置する太陽光発電設備に比べると、中古物件の方が融資も認められやすいといわれています。なぜかというと、これまでに運用してきた実績が明らかであり、将来的な収益性も計算しやすいためです。
以前と比較してコストは抑えられてきてはいるものの、導入にある程度の費用が必要な太陽光発電では、ローンを組むケースが多く見られます。契約者の返済能力だけでなく、「太陽光発電で収益化できるのか」点も審査対象です。実際の審査基準となる要素は他にもありますが、太陽光発電投資の初心者にとって、資金調達のしやすさは大きなメリットと言えるでしょう。
中古の土地付き太陽光発電を購入するときの注意点
中古の太陽光発電には特有のメリットが多くありますが、全ての物件がおすすめできるというわけではありません。安定した利益を得るためには、周辺の環境や住民との関係性をチェックすることも大切です。
ここからは、設備を購入の際に事前に押さえておきたい注意点を3つ紹介します。
法令を遵守した運営がされてきたか
事前に確認しておきたいのは、「これまで適切に運用されていたかどうか」という点です。資源エネルギー庁による太陽光発電に関するガイドラインでは、以下のような項目が定められています。
・法令・条例に従って、点検や管理に関する実施計画を策定
・なんらかのトラブルが発生した場合も対応方針を定める
・策定した計画は実施期間中保管する
・点検や管理の内容は記録・保管する
ガイドラインが適切に守られていない場合、購入後に不具合が発生したり故障に気付かなかったりといったリスクが高まります。運用にかかわるガイドラインの内容は多岐にわたるため、運用やメンテナンスについては、信頼できる業者への依頼も重要といえるでしょう。
土地の地盤沈下や雨水処理に問題がないか
新設時には問題がなくとも、長く運用を続けるうちに不具合が生じるケースもあります。経年劣化のほか、台風や地震など自然災害もトラブルの要因となるためです。こうした懸念を探るためには地盤沈下や不適切な雨水処理など、複数のチェックポイントが挙げられます。発電力低下や故障のリスクへの影響を考えると、以下のような中古物件は避けたほうがよいでしょう。
・太陽光パネルにひびが入っている
・架台が傾いている
・パーツを接合するボルトが固定されていない
整備や修理が可能なケースもありますが、予想以上に大きく費用がふくらんでしまうかもしれません。懸念のある箇所がないかどうか販売業者にも確認しながら、運用に問題のない投資先を選定できると安心です。
近隣とのトラブルはないか
近隣の民家と太陽光発電設備の物理的な距離が近い場合、住民からの苦情などでトラブルに発展するケースも考えられます。太陽光パネルの反射光が生活に悪影響を与えたり、雑草で景観が悪くなったりといったこともあるためです。
こうしたトラブルは 場合によっては裁判に発展するケースもあるため、過去の所有者・業者と近隣の関係性も確認したほうがよいでしょう。問題の有無を知らないまま購入すると、いざ運用を開始してから身に覚えのない問題に見舞われるケースもあります。満足に運用できない状況では中古物件のメリットも活かせないため、近隣トラブルのないエリアを条件に選びましょう。
土地に抵当権が付いている中古物件を購入するときの注意点
太陽光発電設備が設置されている土地には、「抵当権」が付いている場合もあります。抵当権とは、融資の契約時に土地そのものを担保にするための権利です。この権利があることで購入自体は問題ありませんが、抵当権によるリスクや対応方法があることは事前に押さえておきましょう。また、抹消の必要性や根抵当権についても解説します。
土地の抵当権とは
金融機関から融資を受けた場合、完済まで分割して支払い続けることが一般的です。しかし、契約者の収入状況などが原因で返済が困難になるケースもあります。返済が滞ったとき、金融機関側のリスクを避けるために設定されるのが「抵当権」です。
抵当権を設定した土地は「抵当物件」ともいわれますが、滞納がなければ通常通り所有・運用が可能です。
ただし、返済が困難になると抵当権を持つ債権者が物件を競売にかけるなどして債権を回収する、という仕組みです。借入額を全額返済した場合は、登記手続きによって抵当権も抹消されます。
抵当権が設定されたままでも、基本的に所有者は物件を自由に取引できるため、売買契約を交わしても問題ありません。ただし、抵当物件を売買する際のリスクはしっかり理解しておきましょう。
物件の決済前に抵当権は抹消させておく
抵当権が設定された土地を購入する場合は、取引前に抹消手続きを終える必要があります。完済できないまま売買取引を交わすと、所有権を得る前に抵当権が実行されるケースもあるためです。つまり、「代金を支払ったにもかかわらず、所有権が得られない」といった結果になるかもしれません。このようなケースでは、残債がある状態で購入した物件の抵当権を抹消するために、以下のような選択肢から選ぶ必要があります。
・売主が残債分を全額返済する
・買主が支払う土地の費用で返済する
・売主が所有する別の物件を担保に設定する
返済が完了した後は、債権者から必要な書類を受け取り、売主自身が司法書士に依頼するなどして抵当権抹消の手続きをする必要があります。トラブルを避けるため、売買代金の決済時に抵当権抹消手続きをする「同時抹消」を実行するのが一般的です。
土地に根抵当権が付いている場合
抵当権と混同しやすい権利に「根抵当権」があります。
抵当権とは異なり、当該物件の担保価値から借入できる上限額を設定し、その範囲内で借入・返済を複数回繰り返して実行可能な仕組みです。
例えば3,000万円の上限額を決めた場合、「1,000万円借りた後に500万円返済し、再度1,000万円借り入れる」といった方法も選択できます。
事業資金として活用するケースが多いため、大規模な太陽光発電を設置する土地に設定される可能性が考えられるでしょう。
注意しておきたいのは、抵当権に比べて手続きが複雑化しやすい点です。根抵当権を抹消するには、当事者同士の合意が必要となります。
根抵当権が付いたまま購入すると、抹消手続きに応じてもらえずトラブルに発展するかもしれません。また、借入・返済の金額によっては違約金や手数料が発生します。購入したい土地に根抵当権が設定されている場合は、取引前に抹消できるか確認しましょう。
土地付き太陽光発電の物件投資・売却はリベラルソリューション
セカンダリー物件の運用が増えてきたとはいえ、土地付き太陽光発電物件の売り手・買い手をそれぞれ結びつけることは、そう簡単なことではありません。セカンダリー物件の強みを生かすには、太陽光発電の設備が良好であることが担保されている必要があるからです。
リベラルソリューションでは、土地付き太陽光発電のご購入を検討されている方だけでなく、売却をご希望の方に対してもご相談を承っております。仲介業務に加え、数千件以上の豊富な施工実績を強みに購入希望者さまと売却希望者さまをスピーディーにマッチングいたします。
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まとめ
土地付きで販売されている中古の太陽光発電設備は、近年注目を高める投資対象のひとつです。資金面だけでなく、実績や単価にも中古物件ならではのメリットがあります。購入後のトラブルを避けるために、事前のチェックポイントも押さえておきましょう。
また、設備の売却を考えている方にとっても、ガイドラインに遵守した運用やメンテナンスができているか、売却時の実地調査を安心して依頼できる機関はどこか、といった確認作業が重要になります。
安定した運用やキャッシュフロー改善を目的とした売却への手続きを進めるためには、信頼できる業者の選定も重要です。「どこに依頼すればよいか分からない」と悩んでいる方は、ぜひ弊社にお任せください。安心のアフターフォローで、初めての投資・売却もトータルにサポートいたします。