太陽光発電のシステムを導入する際には、初期費用に加えて運営コストのシミュレーションが重要です。販売・施工会社によって提示内容が異なるケースもあるため、コストの内訳や削減方法が分からず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、太陽光発電にかかるコストの現状や適正価格の判断基準などを詳しく解説します。導入から運営までにかかる費用の細目やコスト削減のポイントも併せて紹介するので、参考にしてみてください。
ゼロコストの太陽光発電は本当に可能か?
太陽光発電の販売・施工会社を選ぶ際、価格の安さのみを重視するのは賢明といえません。コストがほとんどかからない導入をアピールするケースも見られますが、初期費用だけでなく継続的な運用コストも必要です。太陽光発電の日本における市場の変化やコストについて解説します。
産業用発電コストは上昇傾向
まずは、日本市場における産業用発電のコストの変動について見ていきましょう。太陽光発電協会が行ったアンケートによると、近年の産業用発電コストは上昇傾向にあるとの結果が出ています。
2022年度の実勢としては、約15%以上の上昇との回答が63%の企業からありました。2023年度の見通しとしては、約20%以上の上昇との回答が54%を占める結果となっているのです。コストが上昇している要因としては、太陽電池パネル・システム機器・工事費の価格の上昇が挙げられています。太陽光発電は価格が下がっているイメージを持っている方も多くいらっしゃるはずですが、産業用発電コストに関しては一概に安くなっているとはいえない状況です。
家庭用太陽光発電の設備コストは減少傾向
家庭用太陽光発電の設備コストは、減少傾向にあります。経済産業省「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」を見ると、家庭用太陽光発電の設置費用相場は以下の表のように推移していることが分かります。
年度 | 設置費用相場(1kWあたり) |
2017年 | 36万円 |
2018年 | 33.3万円 |
2019年 | 30.5万円 |
2020年 | 29.2万円 |
2021年 | 27.5万円 |
2022年 | 26.7万円 |
2017年から2022年までの5年間で約10万円、1kWあたりの家庭用太陽光発電の設置費用が安くなっています。なお、設置費用相場の内訳としては、太陽光パネルが約55%、工事費が約27%を占めています。
太陽光発電のコストはどのように判断すべきか
「ゼロコスト」をうたって契約を促すような会社があっても、安易に決断するのはおすすめできません。導入コストに注目し過ぎると、他の要因によって結果的に損をしてしまう可能性があるためです。依頼する会社を見極めるとき、以下のポイントを押さえておきましょう。
・シミュレーションの信頼度
・メンテナンスの費用の確認と実施状況
・補助金申請の代行を行っているか
太陽光発電は長く運用する設備であるため、設置会社との付き合いも長くなります。そうした観点からも多少コストが高くつく会社であっても信頼度を優先するべきだといえるでしょう。
また、導入を検討する上で押さえておきたいのは、「長年運営する上でどのくらいコストがかかるか」という点も挙げられます。設備費用に加え、太陽光発電システムで得られる電力や売電収入も重要なポイントです。その際、FIT制度に関する規定をしっかり理解して正しく判断できるとよいでしょう。
太陽光発電の適正な導入コストを知る方法
「導入にどの程度コスト発生するか」は、適切な業者を選ぶことで明確化できます。実績と知識が豊富な会社であれば、さまざまなデータを活用してシミュレーションできるためです。信頼できる会社に依頼したいなら、納入実績の豊富さを重視して選んでみましょう。導入コストの適正価格を判断する2つの方法を紹介します。
納入実績が豊富な販売・施工会社に相談する
太陽光発電システムを販売・施工する会社を探す際は、これまでの納入実績をチェックするのがおすすめです。システムの規模によって傾向が異なるため、可能であれば家庭用の太陽光発電に絞って探すとよいでしょう。
導入したい住宅と同等の規模の施工実績が豊富な会社であれば、安心して任せやすいといえます。高い技術力や品質が期待できるだけでなく、適正な価格での導入・運営コストを提示してもらいやすいためです。「相談に丁寧に応じてくれるか」も、依頼先を選ぶ際に大切なチェックポイントといえるでしょう。
発電シミュレーションが適正かどうか判断する
中には悪徳な方法で契約を促す会社も存在します。不要な設備の購入を強引にすすめられたり、シミュレーションで水増しされたりする可能性があることも考慮しておきましょう。
シミュレーションを依頼する際は、計算に使用したデータの提示も求めると安心です。太陽光パネルの面積や太陽との位置関係など、複数の要素が発電に影響します。詳しく説明してもらえない場合は、その会社に設置を依頼しても信頼関係を築けません。その後の安心の運用のためにもシミュレーションが適正かどうかで判断するとよいでしょう。
事前に調べておきたい方は、NEDOのWebサイトから日射量データベースをチェックして自分で算出するのもおすすめです。
再エネ賦課金の削減効果についても検討する
再エネ賦課金とは、再生可能エネルギー発電促進賦課金の略称で、太陽光発電や風力発電などの再エネの買取に必要な費用をまかなうための賦課金です。再エネ賦課金は電気の使用量に応じて、電気料金の一部として負担が発生します。
本来であれば支払いが必要な再エネ賦課金ですが、太陽光発電を活用すれば再エネ賦課金の支払いを無料にできます。例えば、自宅に太陽光発電を設置して再エネを自家発電させて、電力会社から電気を購入せずに自家消費できれば、再エネ賦課金は発生しないのです。太陽光発電の適正な導入コストを算出する際には、再エネ賦課金の削減効果についても考慮してみましょう。
太陽光発電の導入コスト
実際に太陽光発電システムを導入するときは、設置場所を調査する段階からコストが発生します。具体的な金額は依頼先によって変動するため、基本的な知識として3つのコストを把握しておきましょう。設置場所を決めたり、必要な手続きを申請したりといった工程も重要です。それぞれ詳しく解説します。
調査・設計・申請費用
契約直後に実施されるのが、屋根や屋根裏の調査です。専門家が複数の観点からチェックし、太陽光パネルやパワーコンディショナの設置場所を決めます。代表的な内容は以下です。
場所 | 調査内容 |
屋根 |
・屋根の寸法を確認 ・太陽光パネルを設置する箇所の勾配や方位 ・屋根の劣化具合 ・雪止めの位置 |
屋根裏 |
・雨漏りの有無 ・屋根裏にある木材の強度や材質 |
室内 |
・ブレーカーのタイプを確認 ・パワーコンディショナを設置する場所の決定 ・配線の確認 |
調査に加え、設計や手続きの申請にもコストが発生します。導入後快適な生活を続けるためにも重要といえるため、入念に調査・設計してくれる会社に任せられると安心です。
機器・設備費用
導入コストの大部分は、太陽光パネルやパワーコンディショナといった機器・設備費用が占めています。各設備の費用は会社や設備規模により変動しますが、以下が代表的な項目です。
・太陽光パネル(太陽電池モジュール)
・架台
・接続箱
・パワーコンディショナ
・売電メーター(電力量計)
・発電量モニター
・昇圧機
蓄電システムも同時に導入する場合、上記に加えて蓄電池・蓄電用パワーコンディショナのコストも加わります。費用を左右するのは、発電可能な電力量や太陽光パネルの面積などです。販売会社が設定する価格だけでなく、メーカーや機種によって価格に幅がある点も理解しておきましょう。
施工費用
購入したい機器が問題なく設置できるようであれば、施工作業に移ります。主な施工内容は以下の3つです。
・架台の設置
・太陽光パネルの設置
・電気配線工事
それぞれ個別に費用を計上するケースが多く見られるため、シミュレーションの際に併せて確認しておくと安心です。同等規模の太陽光発電システムでも、施工費用の内訳は販売・施工会社によって変動します。
太陽光発電の運用に必要なコスト
あらかじめ理解しておきたいのは、「導入時だけでなく運用する上でもコストが発生する」という点です。太陽光発電のメリットを生かすためには、システムの状態を良好に保ち続けることが求められます。定期的なメンテナンスや交換もコストに含まれるため、導入後も継続的にかかる費用の詳細を把握しておきましょう。
火災保険料
太陽光発電システムを導入した方の多くは、住宅用火災保険に加入します。後付けの場合は、すでに加入している保険で賄うために保険料を上乗せするケースがあることに注意が必要です。具体的なプラン内容は保険会社や商品により異なるため、契約を決める前に料金・内容を確認しましょう。一般的な火災保険の補償内容は以下の通りです。
対象に含まれるもの | 対象外のもの |
・火災 ・爆発や落雷 ・風災や雪災 ・盗難 ・水災 ・外部からの飛来物の衝突 ・電気または機械的な原因の事故 |
・地震(地震保険) ・津波(地震保険) |
火災の他、水災や風災といった被害も含まれるのが一般的です。ただし、地震・津波は別途地震保険の契約が必要となります。補償が手厚いほどコストも増えるため、継続的な支払いに負担を感じない程度のプランを検討できると安心です。
定期点検費用
太陽光パネルやパワーコンディショナの劣化を抑制するために、定期的なメンテナンスが求められます。具体的な内容は以下です。
・太陽光パネルの架台がしっかり固定されているか確認する
・太陽光パネルの表面に付着した汚れを取る
・傷や破損がないか確認する
・パワーコンディショナ内部に故障がないか確認する
・電気が漏れていないか測定する
・適切な電気が流れているか(大幅に性能が落ちていないか)測定する
メンテナンスのコストは負担に感じるかもしれませんが、丁寧な点検や不具合の早期発見は重要といえます。故障に気付かないまま長期間使い続けると、本来発揮できる能力が半減する可能性もあるためです。点検内容や期間によって費用も異なりますが、手厚いほうが安心感を高められるでしょう。
機器・設備の修理や交換費用
定期メンテナンスなどで不具合が発覚した場合は、機器を修理したり部品を交換したりといった必要性も生じます。太陽光パネルの耐用年数は30年以上と長寿命ですが、長年運用していれば、交換が必要になる設備もあるでしょう。
修理や交換費用の金額は内容により大幅に変動します。保証期間内であれば大きな負担なく可能です。複数の設備が組み合わさって稼働している太陽光発電設備では、細かいパーツの修理・部品交換を行うケースも想定されます。
「新しくハイブリッド型の蓄電池も追加したい」といった場合は、新たに導入する機器のコストも必要です。信頼できる担当者と長期的な付き合いを続けていれば、このようなシーンでも安心して任せられます。
買電コスト
太陽光発電で賄えない電気は、契約先の電力会社から購入するのが原則です。余剰電力を買い取ってもらう売電に対し、電気を購入するのは「買電」といいます。太陽光発電システムを運用する上では、ある程度の買電コストが発生する点も理解しておきましょう。買電の基本的な仕組みは、一般家庭で電気を消費するケースと同様です。
総合的な買電コストは発電量に左右されます。加えて、電気を使う時間帯もコストに影響する要因といえるでしょう。例えば、太陽光で発電できない夜間の電気消費量が多い場合は買電量も多くなりやすいためです。実際の買電コストは、太陽光発電システムで賄える電気量や家の大きさ、利用日数などによって変動します。
金利
導入にかかる費用は、金融機関とローンを契約して分割で支払うケースが一般的です。カーローンや住宅ローンと同様、借入額に対して利息が上乗せされます。返済額に組み込まれるため実感しにくいかもしれませんが、利息もランニングコストの一部であることを認識しておきましょう。
金利は、契約したローンの種類によって変動します。金利が高いほど総合的なコストも増大するため、事前にローン返済シミュレーションをしておくのがおすすめです。
コストを削減する方法
運用コストの負担を軽減したいときは、保険料の支払い方法や定期点検の契約内容を再検討してみましょう。入念にシミュレーションをして、最大限利益を得られるプランを組むことも重要です。補助金制度を活用できるケースもあるため、国や自治体の取り組みを下調べするとよいでしょう。コスト削減のために実践できる5つの方法を紹介します。
保険料を年払いする
火災保険に加入する場合は、1年や10年といった長期単位で支払うのがおすすめです。月払いを選択するケースも見られますが、一般的には長期間で契約して一括払いしたほうが保険料を抑えられます。長期間の一括払いにすれば割引が適用され、1か月当たりの保険料が安くなるからです。
無理に長期契約を選ぶと一時的な負担が増す可能性もあるため、中長期的な収支プランを立て、無理のない範囲で決定しましょう。
定期点検の長期契約で単価を下げてもらう
保険料の仕組みと同様に、定期点検やメンテナンスのコストも長期契約によって削減が期待できます。メンテナンスの都度料金を支払うのではなく、5年や10年など長期間の契約を結ぶ方法です。表立ってこのような仕組みを採用していない場合は、担当者に直接交渉してもよいでしょう。
1回当たりの金額は大幅に下がらなくとも、長期的に見るとコスト削減に貢献できます。割引の可否や度合いは会社によって異なるため、なるべく早い段階で交渉を始められると安心です。
機器・設備費は電気代が浮いた分と余剰電力の固定買取で元を取る
太陽光発電システムの導入で懸念されるポイントとして、「導入コストを回収できないのではないか」ということが挙げられます。
しかし、日中の電気代を太陽光発電によって節約しつつ、導入後10年間は固定価格で余剰電力を買い取ってもらうことで、機器・設備費は多くの場合回収可能です。卒FIT後は、蓄電池を組み合わせて自家消費率を増やすことで、太陽光発電のメリットを長期的に享受できます。
一方、いざ稼働させてみるとシミュレーション通りに発電できず、想定していたような売電収入の獲得につながらないケースもあるでしょう。現実的なプランニングと、効率的な設備の選定および運用も重要なポイントです。
発電効率の高いパネルを設置する
家庭用の太陽光パネルには、複数の種類が展開されています。設置場所や面積によって選択肢は異なりますが、現在広く活用されているのは以下のようなタイプです。
・単結晶シリコン:発電効率に優れ、狭い面積でも発電しやすい
・多結晶シリコン:導入コストを抑えやすい
・アモルファスシリコン:パネルが薄く、導入コストも安い
・HIT太陽電池:単結晶シリコンとアモルファスの特性を兼ね備えたパネル
運用コストを削減するためには、効率性に優れた太陽光パネルを設置することが重要といえます。ただし、種類によって単価が異なる点に注意が必要です。中長期的な費用対効果を重視しながら、最適なタイプを選びましょう。
自治体の補助金を活用する
国や各自治体では、太陽光発電システム導入を支援する補助金制度が実施されることがあります。制度によって申請期間や条件が異なるため、住んでいる自治体のWebサイトなどでリサーチするとよいでしょう。群馬県高崎市を例に挙げると、以下が基本的な条件です。
・太陽光パネルの最大出力が合計10kW未満
・日本産業規格などに適合している
・未使用の太陽光パネル(中古品の設置は対象外)
・電力会社と初めて受電契約を締結
補助金を受け取るためには、太陽光パネルの出力や契約時期の要件を満たす必要があります。補助金総額の上限を設け、上限に達すると期間前でも締め切る自治体も多いため、定期的に確認しておきましょう。
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太陽光発電に関するご相談は、設計施工からアフターフォローまでワンストップで対応しているリベラルソリューションにおまかせください。
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リベラルソリューションで太陽光発電を導入していただくと、保証制度が充実しているため安心してご利用していただくことが可能です。具体的には太陽電池モジュールは20年、パワーコンディショナや接続箱といった関連機器は10年の保障が付いています。CO2を削減でき、環境に優しい太陽光発電をはじめてみてはいかがでしょうか。
まとめ
太陽光発電のシステムを導入するためには、設置場所の調査から工事まで複数のコストが発生します。運用中にもさまざまな費用がかかるため、具体的な内訳を明確にして導入シミュレーションをしましょう。
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