太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)の買取期間終了や電気料金の値上がりなどの影響を受け、家庭用蓄電池の需要が高まっています。しかし「家庭用蓄電池の充電の仕組みがよくわからない」という方もいるのではないでしょうか。
家庭用蓄電池にはさまざまなタイプがあり、それぞれ充電方法が異なります。そこでこの記事では、家庭用蓄電池の充電方法をタイプ別に解説します。充電方法やメリットをきちんと把握したうえで導入を検討しましょう。家庭用蓄電池の選び方や管理方法もあわせてご紹介します。
蓄電池の放電・充電の仕組みについて
蓄電池は使い捨ての乾電池とは異なり、充電することで繰り返し使用できる電池です。蓄電池も乾電池も、電解液に入れたプラス極とマイナス極の金属が化学反応を起こして電気が発生します。
電池はマイナス極からプラス極に向かって電子が流れる動力を利用して放電します。乾電池はマイナス極の電子が全てなくなったら放電が終了し、交換しなければなりません。
一方、蓄電池はこの状態に外部から電流を流すことでプラス極に移動した電子がマイナス極に戻るように作られています。プラス極に移動した電子がマイナス極に移動することで放電前の状態(充電された状態)に戻る仕組みです。マイナス極とプラス極の間を電子が行き来することで放電・充電を繰り返し行えます。
家庭用蓄電池の充電方法は
家庭用蓄電池の充電方法は、主に電力会社から購入した電気で充電する方法と太陽光発電で発電した電気で充電する方法の2つに分けられます。ここでは使用目的によって異なる3つのタイプの家庭用蓄電池について、2つの充電方法の観点から解説します。
・単独型:持ち運び可能な小型蓄電池
・単機能型:蓄電池とパワーコンディショナで構成された蓄電システム
・ハイブリッド型:蓄電池用・太陽光発電設備用のパワーコンディショナを一体化した蓄電システム
コンセントから
「単独型」は電力会社から買電して家庭のコンセントから充電します。設置・配線といった大がかりな工事をする必要がないので手軽に導入できるでしょう。
軽量でどこにでも持ち運べ、さまざまな場面で活用できる点がメリットです。停電の際には非常用電源として家の中を自由に移動して使えます。また、アウトドアや車中泊の際には、ライトやミニ冷蔵庫、ノートパソコンなどを屋外でも充電できるのでより楽しめるでしょう。
また「単機能型」も電力会社からの買電で充電ができます。電力会社の電気料金は夜間の価格設定が安くなっていることがほとんどです。この価格差を利用し、買電で深夜充電して日中消費することで、電気料金の削減を図れます。
太陽光発電から
「単機能型」は蓄電池にパワーコンディショナ(充放電出力を変換する装置)が付いた家庭用の蓄電システムです。住宅の分電盤などに接続して充電しますが、太陽光発電設備からも充電できます。停電に対応する非常用電源としても、太陽光発電で発電した電力を蓄える蓄電器としても利用できる点がポイントです。
太陽光発電設備をすでに設置している家庭の場合、太陽光発電から電力を蓄電できる蓄電器を選ぶ必要があります。単機能型なら現状のまま導入できるでしょう。
また、パワーコンディショナで電流を変換する際に電気の変換ロスが発生します。しかし、蓄電池用と太陽光発電のパワーコンディショナが一体になった「ハイブリッド型」を選べば、太陽光発電から蓄電池へ充電する際の変換ロスをなくせるため効率的です。同時設置の場合は特におすすめといえるでしょう。
直流電流をそのまま充電できるタイプも
「ハイブリッド型」は蓄電池用と太陽光発電用の2つのパワーコンディショナが一体化した蓄電システムです。太陽光発電で発電した直流電流をそのまま充電できるので変換ロスがありません。効率的に蓄電できる上、単機能型に比べて広いスペースを必要としないため、太陽光発電による電力の蓄電用にはおすすめです。
ただし、すでに太陽光発電設備を設置している場合は、ハイブリッド型を導入することで太陽光発電設備の保証が使えなくなることもあるので注意しましょう。
蓄電機能付き充電器とは
電気自動車(EV車)を所有していて家庭用蓄電池の導入を検討している方は「蓄電機能付き充電器」を考慮してもよいでしょう。
蓄電機能付き充電器とは家庭用蓄電池が付いた充電器です。電気自動車を所有している家庭では、家庭用蓄電池よりメリットがあるといえます。
電気自動車の燃料費節約に役立つ
蓄電機能付き充電器は、電気自動車の充電を目的に開発されたものです。太陽光発電から電力を蓄電し、その電力を電気自動車に充電すれば、燃料代は実質無料といえます。
太陽光発電設備がない家庭でも電気料金の安い深夜電力を利用して蓄電しておき、それを電気自動車に充電すれば、日中に充電するより電気代を抑えられます。「電気自動車の燃料代を節約したい」という方は、蓄電機能付き充電器を導入するのがおすすめです。
停電など緊急時の電気確保
蓄電機能付き充電器を導入すると、災害などによる停電時に電気自動車を蓄電池代わりとして利用できます。電気自動車に搭載されている蓄電池は、家庭用蓄電池よりも蓄電容量が大きいのが特徴です。そのため、非常時に電化製品をより長時間使い続けられるメリットがあります。
ただ、電気自動車は家庭用蓄電池よりも高額なので、家庭用蓄電池の代わりとして購入するのは難しいかもしれません。すでに電気自動車を所有している場合は、蓄電機能付き充電器の導入を考慮してもよいでしょう。
蓄電池は充電回数がおおよそ決まっている
蓄電池は何度も充電して利用できますが、放電・充電を無限に繰り返せるわけではありません。おおよその充電回数が決まっており、それを超えると寿命を迎えます。
寿命が来ても、基本的にはすぐに使用できなくなることはありません。しかしだんだんと劣化し、以前のような性能を保てなくなるので早めの対応が必要です。ここでは蓄電池の寿命について解説します。
電池という性質上劣化していく
蓄電池にはリチウムイオンや鉛などの金属が使用されています。充放電を繰り返すうちにこれらの金属が少しずつ劣化して寿命を迎える構造です。蓄電池の寿命は一般的には「サイクル回数」を用いて表します。
「サイクル」とは、電池の充電量が0%の状態から充電して100%になり、放電して再び0%の状態に戻る流れのことです。これを1サイクルとカウントし、何回このサイクルを繰り返せるかが蓄電池の寿命を表す数値となります。サイクル数増加とともに劣化し、寿命を迎えると蓄電容量が減少することを理解しておきましょう。
容量が大きければ寿命も長い
蓄電容量が大きいほど蓄電できる電力は多く、1サイクルあたりの充放電の時間が長くなります。サイクルが長いとサイクル回数は少なくなり、その分寿命が長くなる傾向があります。
家庭用蓄電器に多く採用されているリチウムイオン蓄電池のサイクル回数は6,000回~12,000回です。使用期間に換算すると15年~20年程度といえます。販売先メーカーや使用環境、保守条件によっても変わるのであくまでも目安として捉えましょう。
蓄電池を選ぶとき注目すべきスペック
単機能型やハイブリッド型などの家庭用蓄電池のタイプは決められても、その中から何を基準に選べばよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
家庭用蓄電池を導入する際、蓄電容量などのスペックは重要な判断基準になります。ここでは、家庭用蓄電池を選ぶときに注目すべきスペックと判断基準についてご紹介します。
容量は生活スタイルを見て決める
「緊急時に最低限の電化製品が使えればよい」、「エアコンや冷蔵庫なども存分に使いたい」など生活スタイルにより使用する電力は異なります。自分の生活スタイルに合わせて必要な電力を算出し、それを賄える蓄電容量をもつ蓄電池を購入しなければなりません。
たとえば4人家族で非常時用に家庭用蓄電池を導入する場合、5kWh~7kWh程度の容量が一般的といるでしょう。仮に停電時に冷蔵庫(150W)、エアコン(500W)、照明(100W)、スマートフォンの充電(15W×4台)を6時間使用したいとします。
この場合に必要な電力は、(150+500+100+60)×6時間=4.86kWhとなります。「どの電化製品を何時間使いたいか」を考慮して必要な容量を計算してみましょう。
負荷型を選ぶ
家庭用蓄電池には「全負荷タイプ」と「部分負荷(特定負荷)タイプ」があります。非常用電源として導入する場合、負荷型について理解しておきましょう。
全負荷タイプは停電が起きたときに家中に配電する仕組みを作れる蓄電池です。「この部屋だけ」、「この電化製品だけ」と特定する必要がなく、停電時でもいつも通りに電気を使用できます。
一方、部分負荷タイプは蓄電池を接続した特定の回路のみ使用可能な蓄電池です。「必要最低限の照明や電化製品が使えればよい」という方に向いています。全負荷タイプは便利ですが、部分負荷タイプと比較して価格が高くなる点を考慮しなければなりません。
蓄電池の寿命を延ばせ!管理方法について
家庭用蓄電池は適切に管理しないと劣化が早まり寿命が短くなる可能性があります。高価な買い物なので、できるだけ長く使うために正しい管理方法を理解しましょう。
特に、単機能型やハイブリッド型の家庭用蓄電池は「定置型」と呼ばれ、1度設置すると簡単には移動できません。どのような場所に設置するとよいのかあらかじめ理解しておくことが大切です。
湿気の溜まりやすい場所を避ける
家庭用蓄電池の主な素材は金属です。湿気の溜まりやすい場所に設置すると錆びついて使えなくなる恐れがあります。
たいていは防水仕様になっていますが、雨が降り込みやすい場所や水はけが悪い場所は錆の原因になるので避けたほうが無難です。風通しがよく、屋根や壁などで雨風を防げる場所に設置しましょう。
高温になりやすい場所を避ける
家庭用蓄電池は熱にも弱いため、高温になりやすい場所に設置すると故障する可能性があります。直射日光があたる場所、エアコンの室外機やボイラーの近くなど温度が上がりやすい場所は避けましょう。日照時間の長い南側ではなく、日の当たりにくい北側や日中は日陰になる場所が最適といえます。
逆に温度が下がりすぎても不具合が出ることがあるので、極端に低温になる場所も避けたほうがよいでしょう。
過度な充電または放電を避ける
家庭用蓄電池を長く使用するためには、充電を使い切ったまま放置したり必要以上に充電したりすることは避けなければなりません。しばらく使う予定がない場合は、過放電にならないよう充電を済ませてから保管しましょう。
過度な充電・放電を行うと劣化が進んで寿命が短くなります。最終的に使えなくなるケースもあるので十分な注意が必要です。
まとめ
家庭用蓄電池の充電方法は、主に電力会社からの買電で充電する方法と太陽光発電設備から充電する方法の2つに分けられます。それぞれの特徴やメリットを把握した上で、自分の生活スタイルにあった家庭用蓄電池を導入しましょう。また、適切に充電を行わないと寿命が短くなることがあるため、正しい管理方法や設置場所を理解することも大切です。
リベラルソリューションでは、16年の実績から得たノウハウによって教育されたスタッフが家庭用蓄電池の充電方法や設置場所などさまざまな疑問に丁寧にお答えします。家庭用蓄電池についてくわしく知りたい方は、ぜひリベラルソリューションへご相談ください。ご希望やライフスタイルにあわせたプランをご提案します。