家庭用太陽光発電を設置している場合、余剰電力を売電して収入を得ている方も多いでしょう。太陽光発電について調べている時に、「ダブル発電」というワードを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。ダブル発電は売電量の増加に役立つシステムです。
そこでこの記事では、ダブル発電の仕組みと売電単価、蓄電池を導入するのに最適なタイミングを紹介します。ダブル発電をうまく利用すれば太陽光発電をより効果的に使え、売電収入の向上や環境保護にも役立つでしょう。
蓄電池を使って売電する「ダブル発電」の仕組み
ダブル発電は「太陽光発電と蓄電池あるいは別の発電方法を同時に運用する方法」です。まずは、ダブル発電は具体的にどのような仕組みなのか、どのような効果があるのかを紹介します。太陽光発電をすでに利用しており、これから蓄電池を導入したいと考えている方は、あらかじめチェックしておきましょう。
蓄電した電力を自家消費して太陽光の余剰電力を増やす方法
ダブル発電とは、以下のいずれかに当てはまる太陽光発電の運用方法です。いずれにも当てはまらない太陽光発電の利用方法は、「シングル発電」と呼んで区別しています。
・太陽光発電と別の発電システム(エネファームなど)を同時に運用する
・太陽光発電と蓄電システム(家庭用蓄電池)を併用する
太陽光発電と蓄電池をセットで運用するタイプのダブル発電では、電力を一旦蓄電して自家消費することが可能です。
単価が安い夜間電力を蓄電して日中の自家消費に当てれば、太陽光発電の余剰電力を増やせます。余剰電力を増やせれば売電収入の増加を見込めるため、ダブル発電をうまく活用すればお得になるでしょう。太陽光発電と併せて蓄電池を導入することには大きなメリットがあります。
「押し上げ効果」がある機器は?
ダブル発電を利用すると、太陽光発電を単体で運用した場合に比べて発電量が増えるのが特徴です。これを押し上げ効果と呼びます。以下のような機器に押し上げ効果があるため、チェックしておきましょう。
・家庭用蓄電池:パワーコンディショナには太陽光発電システムと併用できるハイブリッド型も選べる
・エネファーム(家庭用燃料電池コージェネレーションシステム): ガス・灯油などの燃料を使用して発電し、排熱を急騰に利用するシステム
・エコウィル:2017年まで販売されていた家庭用コージェネレーションシステム。仕組みはエネファームと同様
・電気自動車(V2H):蓄電機能を備えた自動車。メーカーによってダブル発電にならないものもある
これらの機器類は「創エネ機器」と呼ばれます。押し上げ効果を得られるだけでなく、環境保護にも役立つのでうまく活用するとよいでしょう。電気料金を効率良く節約できる機器には自然冷媒ヒートポンプ給湯器(エコキュートなど)もあります。
蓄電池を使ったダブル発電の売電単価はいくら?
「ダブル発電に認定されると売電単価が低くなる」と聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
この情報は正しいところもありますが、一部は不正確です。ここからはダブル発電と売電単価の関係をチェックしましょう。FIT制度の仕組みや認定された時期が影響するため、それらの情報も詳しく紹介します。
ダブル発電で注目しておきたいFIT制度とは
FIT制度とは「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」のことです。FIT制度によって、電力会社は太陽光発電で発電された余剰電力を一定期間、固定価格で買い取ることが義務付けられています。
一例として、2020年度に認定された10kW未満の太陽光発電設備の場合、10年間の固定買取価格が21円/kWhです。2018年度に認定された設備の場合は、設備の状況によって25円/kWh~27円/kWhで10年間の買取が保障されます。
FITの認定を受けた年度によって売電価格が異なるので注意が必要です。ここからは、ダブル発電のFIT認定と売電価格の関係を詳しく紹介します。10kW未満の太陽光発電を設置した場合を例にして見ていきましょう。
2019年度以降の認定であれば同単価
2019年度以降にダブル発電に認定された場合、太陽光発電のみを使用しているシングル発電と比べて売電価格の差はありません。経済産業省が定めた2019年度および2020年度の売電価格は以下の通りです。
年度 | 調達価格 | 調達時間 |
2020 | 21円/kWh | 10年間 |
2019 | 24円/kWh~26円/kWh | 10年間 |
売電価格が家庭用電力の小売価格に近くなったことにより、ダブル発電でもシングル発電でも売電価格が同額になりました。
売電価格が小売価格を下回ると売電のメリットが少なくなり、ダブル発電による押し上げ効果を考慮しても不公平感が少ないのも影響したといえるでしょう。2020年9月時点での小売価格が20円/kWh~30円/kWhであることを考えると、売電価格との間に差がないことが分かります。
2018年度以前の認定は売電単価が下げられてしまう
2018年度以前に認定された設備の場合は、シングル発電に比べて売電単価が下がるのが特徴です。一例として、2015年度以降の売電価格をチェックしてみましょう。
年度 | 調達価格(ダブル発電) | 調達価格(シングル発電) | 調達期間 |
2018 | 25円/kWh~27円/kWh | 25円/kWh~27円/kWh | 10年間 |
2017 | 25円/kWh~27円/kWh | 28円/kWh~30円/kWh | 10年間 |
2016 | 25円/kWh~27円/kWh | 31円/kWh~33円/kWh | 10年間 |
2015 | 27円/kWh~29円/kWh | 33円/kWh~35円/kWh | 10年間 |
2018年度に認定された設備であれば差が小さいものの、2015年度に認定された設備であれば6円/kWhと大きな差になります。
売電価格が低く抑えられている理由は、ダブル発電には押し上げ効果があるためです。押し上げ効果によって売電量が増えることを考えると、シングル発電の場合と同額で買い取るのは不公平だといえるでしょう。
電力会社が支払う調達費用が増加することによって、電気料金が上昇することを防ぐための仕組みです。
蓄電池と太陽光発電の併用でも売電単価が下がらないケース
2018年度以前に認定された太陽光発電設備で、蓄電池を併用している場合でも売電単価が下がらないケースもあります。どのような場合に売電単価が下がらないのかチェックしましょう。
ダブル発電に該当しても売電単価が下がらない場合と、ダブル発電に該当しないように調整する場合の2パターンが存在します。
10kW以上の認定なら下がらない
太陽光発電の出力容量が10kW以上の場合は、ダブル発電に該当しても売電単価が下がりません。すでに10kW以上の太陽光発電を設置している場合は、安心して蓄電池を設置できるでしょう。具体的には、以下の条件に該当するとダブル発電で売電単価が下がります。
・太陽光発電の出力容量が10kW未満である
・2018年度以前に認定を受けている
ただし、10kW以上の設備は、10kW未満の場合と比べて売電価格が低くなることに注意が必要です。一方で、固定価格で売電できる期間が20年になるというメリットがあるため、併せて覚えておきましょう。
シングル発電用の蓄電池を併用する
蓄電池を設置しつつもダブル発電に該当しないようにするため、シングル発電用の蓄電池が存在します。この蓄電池は、売電時には蓄電池からの放電をストップするのが特徴です。
蓄電池に蓄電した電力を売電することはないため、太陽光発電で発電した余剰電力のみを売電することになります。売電時に蓄電池による押し上げ効果を得られないことから、シングル発電として認定されるという訳です。
自宅に蓄電池を導入しようと考えているものの、ダブル発電になることを防ぎたいならシングル発電用の蓄電池やシングル発電設定が可能な蓄電池を選ぶとよいでしょう。
電気自動車を所有しているとダブル発電になる?
太陽光発電を導入している場合、電気自動車を所有するとダブル発電になると聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。全ての電気自動車がダブル発電になるわけではありませんが、一定の条件を満たすとダブル発電になります。
ここからは、どのような電気自動車を所有するとダブル発電になるのかを見ていきましょう。電気自動車の購入を考えている方は、事前にチェックしておくことをおすすめします。
電気自動車を蓄電池として代用できるV2Hシステム
所有している電気自動車が「V2H(Vehicle to Home)」に対応している場合、V2Hシステムとセットで導入するとダブル発電になるので注意が必要です。
V2Hは一部の電気自動車やプラグインハイブリッドカーが対応しているシステムで、自動車に搭載したバッテリーから住宅に電力を供給できます。住宅側にV2Hシステムを導入すれば、住宅へ電力を供給できるのがメリットです。車のバッテリーを蓄電池として利用するためのシステムといえるでしょう。
通常のV2Hは蓄電池の代用になるため、太陽光発電ユーザーが導入するとダブル発電になります。車によってはSMART V2Hと呼ばれるシステムを装備しているものがあり、この場合はダブル発電になりません。
SMART V2Hは売電時にバッテリーからの放電を停止する機能があり、シングル発電用の蓄電池と似たような仕組みといえるでしょう。
メリットとデメリットを理解して導入する
一般的なV2Hを導入するとダブル発電になるものの、V2Hには多くのメリットがあります。電気自動車やプラグインハイブリッドカーを購入したい方は、メリット・デメリットを考慮して総合的に判断する必要があるでしょう。具体的なメリットは以下の通りです。
・自動車の動力と蓄電池という2つの役割を果たせる
・容量が大きい
・災害時の備えとして役立つ
V2Hがダブル発電に該当する、蓄電機能を利用するには別途機器が必要というデメリットがありますが、上記のように数多くのメリットがあるのも見逃せません。V2H対応の電気自動車の購入を検討している方は、デメリットだけでなくメリットもよく考えることが重要です。システム全体を考慮し、購入するかどうかを判断しましょう。
蓄電池を活用しながら発電&自家消費する時代に
FITによる固定価格での買取も調達期間が満了すれば終わります。太陽光発電は長期的に運用するものなので、卒FIT後のことも考える必要があるでしょう。ここでは、FIT満了と蓄電池の関係を紹介します。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせて自家消費すれば、よりお得にエネルギーを利用できるでしょう。
FIT満了時が蓄電池導入のグッドタイミング
固定価格での買取が終了すると、売電価格が大幅に減額されます。1kWhあたりの売電価格が10円以下になっている電力会社もあるため、可能な限り自家消費にシフトすることが大切です。小売価格より売電価格のほうが大幅に低く、自家消費のほうがお得になることを覚えておきましょう。
したがって、FIT満了時が蓄電池を導入するグッドタイミングです。太陽光発電で発電した余剰電力を蓄電し、必要に応じて消費しましょう。間もなくFIT満了を迎える方は、この機会に蓄電池の導入を検討してみてはいかがでしょうか。自家消費できる電力が増えればその分お得になり、FIT満了後もコスト面で太陽光発電の恩恵を多く受け続けられます。
蓄電池の導入で可能になること
太陽光発電は単体で運用するのではなく、蓄電池と併せて運用するのがおすすめです。蓄電池とセットなら、以下のような運用ができます。
・日中の余剰電力を夜間に消費する
・単価が安い夜間電力を蓄電して荒天時の日中に消費する
・停電時の電源として使用する
太陽光発電だけでは柔軟な運用ができないため、蓄電池を併せて利用して柔軟性を高めるのがおすすめです。太陽光発電で発電した余剰電力は蓄電池に蓄電し、太陽光発電が利用できないときに消費します。最大限自家消費した後に残った電力を売電するという運用方法がよいでしょう。
太陽光発電をより便利かつお得に利用し、環境保護に貢献するためには適切な蓄電池をセットで運用するのがおすすめです。
蓄電池を導入する?しない?いつ?に迷ったら
蓄電池を導入するかどうかで迷っている方は、太陽光発電の発電量や住宅内での消費電力量を分析しなければなりません。蓄電池の容量はさまざまなので、家庭の電気消費状況に合う容量を選択しましょう。住宅内にIH調理器など200V機器がある場合、200V出力に対応した蓄電池を選ぶことも大切です。
最適な選択をしたいなら専門業者に相談してアドバイスをもらいましょう。リベラルソリューションでは、太陽光発電や蓄電池の導入から運用までトータルでサポートしています。保証サービスも充実しているので、蓄電池の導入を検討している方はぜひご相談ください。
まとめ
蓄電池は太陽光発電で発電した余剰電力を蓄電するために役立ちます。より効率的に太陽光発電を利用したいなら、導入する価値があるでしょう。2018年度以前にFITが適用されている場合は、ダブル発電による売電価格の低下にも注意しなければなりません。
蓄電池の導入を検討している方、太陽光発電とセットで導入を考える方は、ぜひリベラルソリューションにご相談ください。蓄電池の選定から導入、アフターサポートまでトータルサポートしており、安心して蓄電池を運用できます。
光熱費を削減したいと考えている方や、環境保護に貢献したいと考えている方は、ぜひリベラルソリューションにお問い合わせください。Zoomを利用したWeb面談も実施中です。