電力の有効利用や停電時の備えとして注目されている蓄電池ですが、どの機種を選べばよいか分からない方もいるのではないでしょうか。蓄電池は何でもよいというわけではなく、家庭の状況や希望に合ったものを選ぶことが大切です。
そこでこの記事では、蓄電池の選び方について解説します。蓄電池を選ぶ際にチェックする項目を把握すれば、用途に合わせた機種の選び方が分かるでしょう。利用したいケース別の選び方も紹介します。
蓄電池の選び方を知る前に│蓄電池の3つのタイプ
環境に合わせた適切な蓄電池を選ぶには、蓄電池にはどのような種類があるのか知ることが大切です。ここでは、3タイプの蓄電池の特徴について解説します。想定している使い方を考慮して、希望するタイプを決めましょう。
電力会社の電力で蓄電「独立型」
電力会社が供給する電力を蓄電するのが「独立型」です。蓄電した電力は任意のタイミングで使用できます。ブレーカーに接続して住宅全体に電気を供給するタイプや家電のコンセントを直接差し込むタイプがあるので、用途に合わせて選ぶとよいでしょう。
電気料金が安い深夜電力を蓄えて、昼間の消費電力量を減らすことで電気代の節約につながる他、停電時の予備電源としても役立ちます。
太陽光発電からも蓄電できる「連係型」
電力会社が供給する電力だけでなく、太陽光発電システムで発電した電力が蓄電できるのが「連係型」です。蓄電池の電力は分電盤や電気配線を通して住宅全体に供給されます。
電力会社の電力供給がなくても、太陽光発電システムが稼働していれば電力を蓄えられるのが大きなメリットといえるでしょう。長期の停電にも対応できるため、災害時の備えとして頼りになります。また、パワーコンディショナが2台必要な「単機能型」と1台で済む「ハイブリット型」があるのも特徴です。
EVからの充放電ができる「EV対応型」
EVとは「Electric Vehicle」の略で、電気自動車のことです。パワーコンディショナを備えている「EV対応型」は電気自動車から充電と放電が可能で、電力会社や太陽光発電の電力を蓄電できる機種もあります。
EV対応型は他の2タイプよりも容量が大きい機種が多く、余裕のある運用ができることも特徴のひとつです。日中に十分な量の電力を蓄えられれば、電力の自給自足を実現できるかもしれません。
蓄電池でチェックすべき項目と選び方
蓄電池のスペックを把握するには、それぞれの項目の内容を理解することが大事です。カタログに記載された項目が何を意味しているのか分からなければ、適切な機種を選ぶのは難しいでしょう。ここでは、特にチェックしたい7つの項目について解説します。
サイクル回数にも関わり深い「蓄電容量」
「蓄電容量」は電力を蓄えられる容量を示しています。蓄電容量が大きいに越したことはありませんが、容量が大きい蓄電池は費用がかかるのが一般的です。
ただし、蓄電容量が使用電力に見合っていないとたびたび充電する必要があり、利便性の面で難があります。長く使用し続けるなら、使用する電力量に応じた蓄電容量の蓄電池を選ぶことが重要です。
電力を出力する数値である「定格出力」
指定された条件下で安全に達成できる最大出力が「定格出力」です。定格出力の数値によって、一度に使用できる機器や設備の数が決まります。
電化製品を稼働させるには最低限必要な電力があり、定格出力の数値が低いと複数の機器を同時に使えません。日常的に使いたい家電と定格出力に応じた蓄電池を選ぶことを心掛けましょう。
充放電の回数を示す「使用可能サイクル」
蓄電池は無制限に使用できるものではなく、充放電可能な回数が決まっています。蓄電量がゼロの状態から最大まで充電し、使い切るまでが1サイクルです。何サイクル使用できるかという回数の目安の「使用可能サイクル」をチェックしましょう。
使用可能サイクルは蓄電池の種類やメーカーごとに異なります。サイクル回数が多いかどうかを基準のひとつとして選びましょう。
屋内と屋外に分かれる「設置場所」
蓄電池本体の設置場所は屋内と屋外に分かれます。それぞれ特徴が異なるので、どちらにするかは重要なポイントといえるでしょう。
屋外型は雨風にさらされるため、破損や故障のリスクが高いというデメリットがあります。屋内型は故障のリスクは低いものの、稼働音が気になる方がいるかもしれません。設置できるスペースだけでなく、デメリットも考慮して選びましょう。
使い勝手が変わる「機能」
蓄電池が搭載している機能は機種によって異なり、使い勝手もさまざまです。主な便利な機能には以下のようなものがあります。
機能 | 特徴 |
ハイブリッド型 | 直流を交流に変換するパワーコンディショナを搭載している蓄電池。太陽光発電システムと併用する場合、別途パワコンを購入する必要がない。 |
グリーンモード | 太陽光発電の余剰電力を蓄電池に蓄えて、足りないときに放電するモード |
遠隔監視システム | 蓄電池を監視し、異常や劣化を早期発見するシステム |
機種選びに失敗すると想定していた用途で使用できない場合があります。より便利に使いたいなら、必要な機能が付いているかどうか確認しましょう。
スペースの確保に影響する「サイズ」
蓄電池は機種によってサイズが異なります。近年は以前よりも小型化していますが、大きい蓄電池だと予定していた場所に設置できない状況も考えられるでしょう。設置する予定のスペースの広さを計測し、適性サイズを把握します。特に、屋内の設置スペースは限られるため、屋内型を選ぶならコンパクトなサイズの機種がおすすめです。
メンテナンス費用に関わる「保証内容」
蓄電池が精密機器である以上、どれだけ丁寧に扱っても故障するリスクからは逃れられません。蓄電池は10年~15年の保証が付いている場合がほとんどですが、保証期間が過ぎてから故障すると、修理代は自己負担です。
また、購入先やメーカーによって保証期間や内容は異なります。万が一の事態に備えて、購入前には保証内容をきちんと確認しましょう。
ケース別の蓄電池の選び方
蓄電池は機種ごとに特徴が異なるため、環境や用途に合わせたケース別の選び方が重要です。自分がどのような用途で使用するのかを踏まえて、必要な機能を備えた適切な機種を選びましょう。ここでは、ケース別の蓄電池の選び方を解説します。
太陽光発電と併せて利用したい場合
太陽光発電システムで発電した電力を有効利用するために蓄電池を導入する場合、発電できる電力と蓄電に回したい電力を考慮して選びます。太陽光発電システムの1日当たりの平均発電量や余剰電力量、消費電力量を把握した上で、蓄電容量を決めましょう。
同時に導入するなら設置スペースが少なくて済み、蓄電効率が優れているハイブリット型がおすすめです。ただし、すでに太陽光発電システムを導入している方は、システムごと買い替えるか単機能型を選ぶか判断する必要があります。
深夜電力を有効利用したい場合
電力会社が供給する電力の料金は一律ではありません。活動している方が多い日中よりも使用者が少なく電力が余剰になりやすい深夜のほうが安いプランもあります。蓄電池を活用すれば、「電気料金が安い深夜電力を充電して、電気料金が高い日中に放電する」といった使用方法が可能です。
深夜電力を有効利用したい場合、日中と夜間の消費電力量のバランスを見て、最適な容量の蓄電池を選ぶことを心掛けましょう。
停電時に備えたい場合
停電して外部からの電力供給が途絶えたときでも電気を使えるのが蓄電池のメリットのひとつです。数分から数十分の停電なら多少不便な程度で済むかもしれませんが、災害時は数日間電力が供給されないことも考えられます。このようなケースでは、蓄電池の有無が命に関わる場合もあるでしょう。
停電時に備えて蓄電池を利用したい場合、照明や冷蔵庫といった停電時に使いたい家電の消費電力量を計算し、必要な量を蓄電できる容量の蓄電池を選ぶことが求められます。
蓄電池の容量の選び方
容量は蓄電池を選ぶ際に特に注目したい重要なポイントです。容量によって蓄電池の使用方法の幅や利便性が大きく変わるため、自分の環境ではどの程度の容量が必要なのか把握することが大切です。ここでは、必要な容量を知るためのシミュレーション方法を確認しましょう。
シミュレーションに使う蓄電池ワードを解説
シミュレーションの際は、「電力変換効率」と「放電深度」というワードついて知る必要があるでしょう。いずれも蓄電池で実際に使える容量を計算する際に用います。
「電力変換効率」は直流を交流に、交流を直流に変換する際の変換効率のことです。太陽光発電による電気は直流、商用電源や家庭内の電気は交流ですが、蓄電池は直流で充放電するので変換しなければなりません。変換の際には電力損失があるため、電力変換効率を用いた計算が必要です。一般的な蓄電池の電力変換効率は95%程度といわれています。
DODとも呼ばれる「放電震度」とは容量に対する放電量の割合です。放電深度が深いと蓄電池の劣化が促進されるため、家庭用蓄電池は約70%に設定されています。
太陽光発電がない場合でシミュレーション!
太陽光発電がないため、深夜電力を蓄電池に充電して昼間に必要な電力を賄う場合をシミュレーションします。1日の電気使用量を10kWh、そのうち昼間に使用するのは70%として、最適な蓄電池の容量を求めてみましょう。
昼間の電気使用量
=1日の電気使用量×昼間の電気使用量の割合
=10kWh×70%
=7kWh
昼の電気使用量7kWhを全て蓄電池で補いたい場合、電力変換効率を95%、放電深度を70%とすると、最適な蓄電池容量は以下の通りです。
最適な蓄電池容量
=蓄電池で補いたい電力量÷放電深度と電力変換効率(70%)
=7kWh÷70%
=10kWh
したがって、容量が10kWhの蓄電池を選べば、深夜電力で昼間に使用する電力を賄う使い方ができるでしょう。
太陽光発電がある場合でシミュレーション!
太陽光発電を利用する場合、太陽光発電の容量を加味してシミュレーションする必要があります。1日の電気使用量を10kWh(そのうち昼間の電気使用量は7kWh)、太陽光発電の容量を4kWh、1kW当たりの1日平均発電量を2.8kW、自家消費の割合を30%として計算してみましょう。
太陽光発電分の自家消費量
=太陽光発電の容量×1kW当たりの1日平均発電量×自家消費の割合
=4kWh×2.8kW×30%
=3.36kWh
蓄電池で補いたい電力量
=昼の電気使用量-太陽光発電分の自家消費量
=7kWh-3.36kWh
=3.64kWh
電力変換効率を95%、放電深度を70%とすると、最適な蓄電池容量は以下の通りです。
最適な蓄電池容量
=蓄電池で補いたい電力量÷放電深度と電力変換効率(70%)
=3.64kW÷70%
=5.2kWh
太陽光発電がある場合、発電した電力を使用できるため、同じ条件なら容量が半分程度で済みます。
蓄電池選びは難しい。失敗を回避するなら実績豊富なリベラルソリューションへ
蓄電池を導入する際はさまざまなポイントに目を向ける必要があるため、専門的な知識がなければ適切な機種選びは難しいでしょう。蓄電池選びに失敗すると想定していた用途で運用できず、利便性の面で苦労する恐れがあります。リスクを回避して自分の環境に合った蓄電池を選ぶには、蓄電池の知識が豊富な専門家からアドバイスを受けることが大切です。
リベラルソリューションは豊富な蓄電池の取り扱い実績があり、それぞれの環境にマッチした最適な機種をご提案します。家庭での効果的な蓄電池の活用方法も紹介しているので、蓄電池の購入をお考えの方はぜひリベラルソリューションにご相談ください。
まとめ
蓄電池を選ぶ際は、蓄電池の種類や「蓄電容量」「機能」「保証内容」のような項目について理解することが大切です。「太陽光発電と一緒に利用したい」「停電時に備えたい」といった用途に合わせて選ぶことで、蓄電池をより有効に活用できるでしょう。
リベラルソリューションでは、蓄電池のメリットとデメリットを熟知した専門家が、それぞれの状況に合わせた最適な蓄電池をご提案します。蓄電池選びにお困りの際は、住宅用エネルギーシステムに精通したリベラルソリューションにお声掛けください。